Warby Parker

Good Service Design Series



ただモノを売るのではなく、「体験」という新しい価値を提供=サービスデザインしている国内外の企業をピックアップ。 サービスデザインにより、人々のライフスタイルに革命を起こしたポイントをご紹介します。

第六回は、2010年にアメリカで誕生したアイウェアブランド「Warby Parker (ワービーパーカー) 」です。

名門ペンシルベニア大学ウォートン校に在籍していた4人の学生が、ニューヨークで創業しましたが、2015年には「世界で最もイノベーティブな50社(THE WORLD’S 50 MOST INNOVATIVE COMPANIES)」で発表されたランキングで、AppleやGoogleを抑えて1位に輝きました。
(参考:Fast Companyの15年度ランキング
オンラインショップから始まった「Warby Parker (ワービーパーカー) 」がイノベーティブと評価され、創業以来人気を保ちつづけている理由を探ります。

ちなみにブランド名「Warby Parker」とは、アメリカの小説家ジャック・ケルアックの未刊作品の登場人物からとったもので、知的なブランドイメージとともに「図書館」や「本」が店舗イメージに欠かせないアイテムになっています。

インターネットから生まれた最初の優れたブランド

ファッショナブル、低価格、無料試着。三拍子揃ったアイウェア

今でこそ日本でもおしゃれで低価格なアイウェアが手に入り、オンラインショップの洋服や靴とおなじようにメガネも試着ができる時代ですが、その基礎を作ったのがWarby Parker でした。

それまでアメリカでは、メガネは決して安い買い物ではありませんでした。コストコやウォルマートで買える安いメガネでも$150~200(約¥15,000~20,000)ほど。もっとオシャレなアイウェアが欲しければ、$200~400(¥20,000~40,000)もするブランド品を選ぶことしかできませんでした。その理由は世界最大手のメガネメーカー「Luxottica」(ルックスオティカ)が市場を牛耳っていたから。一人勝ちの市場で、値付けは思いのままだったのです。

そんな中でWarby Parkerは一律$95(約¥9,500)で販売し、メガネ市場に風穴を開けたのです。

これは
①製造と販売の間にいる中間業者を排除したこと。
②デザイナーを社内に抱えたこと。
③実店舗を持たずオンラインショップのみでスタートしたこともあって、店舗や販売員という固定費を削ることが出来たこと。

により、今までの半分以下の、誰もが手に届く価格を実現しました。

そしてさらに画期的だったのは、「HOME TRY-ON」という、好きなアイテムを最大5つまで無料で5日間借り試着出来るサービス。
サイトから試してみたいアイウェアを選ぶと、約1週間で自宅に届けてくれ、5日間思う存分試したら送料無料で返却するだけ。気に入ったアイテムがあれば、改めてサイトからオーダーします。届いたものを買い取るのではなく、新品の商品が届きます。

どれがいいか迷ったときは、「#WarbyHomeTryOn」のハッシュタグと一緒にSNSに投稿すれば、なんとWarby Parkerの専属スタッフからコメントが届き、似合っているかフィードバックをもらえます!まだ購入を決める前段階でのブランドとのコンタクトも、思わず楽しくなるように設計されています。

オンラインショップからスタートしたWarby Parkerでしたが、2013年にはブランド初となる旗艦店をニューヨークのSoHoにオープンしました。その後ニューヨーク・カリフォルニア・フロリダ・テキサスなど、アメリカやカナダにどんどん数を増やし、今年中に100店舗のオープンを目指しています。もちろん出店計画はサイトの閲覧数などから綿密に計画されているそうです。

リアルショップ展開でありながらユニークなのは、「買ったその日に商品を持ち帰ることが出来ない」というところ。
Warby Parkerにとってのリアルショップとは、ブランドの世界観を体現する場であり、オンラインで販売されているアイテムを実際に手にとって試すためのショールームとして位置づけられています。

New York City, Grand Central

サービスデザイン:アイウェアで世界を変える

購入することで社会に貢献できる

上記で紹介したビジネスモデルや顧客体験も優れているからこそ、世界中で同じようなビジネスモデルを展開している企業が増えていますが、Warby Parkerが人気の理由はそのCSR活動にもあります。

Warby Parkerの調査データによると、世界では25億人もの人々が、矯正用のメガネが必要なのに手に入れることができない現状にあります。中にはそれにより学習や労働が困難になっている人もいます。

「見る権利は全ての人にある」という信念のもと、Warby Parkerはアイウェア1つの売上に対して、1つのメガネを寄付をする「Buy a pair, Give a pair」という活動を行なっています。

この活動は、途上国の男女に視力検査の実施方法を教育し、彼らが現地の人たちに非常に安い価格で販売できるようにサポートを行うWarby Parkerのパートナー団体を通して行われています。
この活動に共感したミレニアル世代を中心に、Warby Parkerが支持されるようになりました。

20世紀前半、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーは、どうすれば人が幸福で生きていくことができるのかということを追及し続けていました。
そのアドラー心理学には、『幸福の3原則』というものがあります。

1.自分が好き
2.人が信頼できる
3.自分は社会や世の中に貢献できる・役に立てる

この3つが満たされたとき、人は幸せだと感じます。

「高品質」「適正価格」「社会貢献」。
安さの追求ではなく、誰かの手によって丁寧に作られた質の高いものへ正しい対価を払いたい、さらにそれが社会貢献にも繋がる。
アイウェアを購入するという体験で、人を幸せにするWarby Parker。
全く新しい価値を当たり前のサービスとして定着させたすばらしい企業です。