Good Service Design Series

スノーピーク


ただモノを売るのではなく、「体験」という新しい価値を提供=サービスデザインしている国内外の企業をピックアップ。 サービスデザインにより、人々のライフスタイルに革命を起こしたポイントをご紹介します。

第4回は、キャンプ用品メーカー、アウトドア用品メーカーの枠にとどまらず、グランピングや地方再生事業、オフィス事業に幅を拡げている「スノーピーク」。今年で創業60周年。創業地新潟県燕三条に広大なキャンプ場を併設した本社があり、社長、社員全員がキャンプを愛するアウトドアパーソン。広告を一切打たないのにも関わらず、社会通念的に”生き抜く力を学ぶ場”であったキャンプを、人間性を回復するための”豊かなもの”だという新しい概念へと変えた企業です。

サービスデザイン:人生に、野遊びを。

モノを提供するというより、シーンに対してお客様に共感をいただく

1958年、山井幸雄(現社長の父)氏が山井幸雄商店という金物問屋を始めます。登山を趣味としており、自分自身が登山をする上での信頼できるアイテムを形にしていく。それが現在のスノーピークとしてのルーツであり、それには燕三条という、世界に誇るものづくりの町の職人たちがサポートが欠かせなかったのです。 1986年に山井太現社長が入社してから、本格的にキャンプ用品に力を入れ始めオートキャンピングという新しい提案をします。キャンプと言えば飯盒炊飯などチープなイメージがまだあった時代に、SLS(スノーピークレイアウトシステム)というものを提唱します。テントは就寝スペース。別にリビングスペースがあり、ファイアースペース、キッチンスペースも備える。「ドーム+タープ+SLS」という現在のオートキャンプの原型を確立しました。こうしたキャンプスタイルは、日本はもとより海外にも存在しなかった、スノーピーク発の新しいスタイルです。 キャンプシーンを、特別なものではなくいつもの生活の延長として身近に感じることができる、具体的な活用シーンをプロダクツによってイメージさせ、共感されました。

ちなみにSLSは、人数や天候によってもスムーズにレイアウトは変更できるよう、全てのギアは"快適基準寸法"をベースにシステムデザインとサイズコントロールされ、テーブルやチェア・スタンド類・クッカー・テントなど、どの時代に購入されたプロダクツも相互に機能し、心地よく効率的なキャンプサイトを演出できるようになっています。

「スノーピークウェイ」という体験ブランディング
〜ユーザーと一緒に“いい体験を積み重ね、ブランドの価値を共創する”〜

スノーピークの何よりのマーケティング手法であり、ユーザーをファンへと昇華させているのが、1998年より続く、ユーザーと一緒にキャンプをするイベント「スノーピークウェイ」です。

会社の原点である、「自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供する」ことへ立ち戻る意味を込めて、ミッションステートメントと同じ名称「スノーピークウェイ」をこのイベント名に。 その後も「スノーピークウェイ」は毎年欠かさず開催し、のべ10万人以上のユーザーから本当に欲しい商品について生の声を聞き、社員と一緒に語り合ってきました。一製品一担当制で、最終製品を作っているブランドだからこそ、徹底的にユーザー視点にこだわる。そして、商品への声がすべて開発した担当本人にフィードバックされる仕組みがあるから、スノーピークは今も進化を続けているのです。 ユーザーもまた、自分の声がスノーピークのプロダクトに反映されることで一緒にブランドを進化させていると実感でき、スノーピークのファンとして永続的に付き合い続けていこうと思うのです。 この「体験ブランディング」ともいえるイベントを何より大事にしているからこそ、ファンを着実に増やし、「人生に、野遊びを。」の価値への共感をあつめています。

アウトドアを超えてさらに拡がるサービス

スノーピークは、キャンパー向けビジネス以外にもアパレルやアーバンアウトドア、地方創生事業、アウトドアオフィス事業など非キャンパー向けビジネスにも着手しています。 アウトドアカンパニーから、自然と人、人と人をつなげ、「人間性の回復」を実現させる企業になることを使命として新しいサービスを生み出し続けています。

編集後記

かくいう私(兼村)も10年来のキャンパーであります。 キャンプにハマったのは、まさにスノーピークのプロダクトで過ごすキャンプでの感動体験があったから。もっというと、このガビングスタンド(ゴミ箱)との出会いが始まりだったのです。 キャンプにおいても、裸のビニール袋ですませることなくゴミを分類できる専用のスタンドであり、夜は動物が荒らさないように口をそのまま閉じることができ、ゴミを捨てられない場合はマジックテープでしっかり封じて持ち帰るためにデザインされたこのガビングから、自然への敬意とマナーを守って野遊びをせよ、とスノーピークに教えられたのです。燕三条のHQキャンプフィールドにも行くほどのファンの1人として、野遊びによって人生を豊かにしてもらっています。