Good Service Design Series

Allbirds


ただモノを売るのではなく、「体験」という新しい価値を提供=サービスデザインしている国内外の企業をピックアップ。 サービスデザインにより、人々のライフスタイルに革命を起こしたポイントをご紹介します。

第8回は、アメリカ・サンフランシスコのスニーカーブランド「Allbirds」。
スニーカーの製造販売という、一見テクノロジーとは無縁に見える企業ながら、シリコンバレーでベンチャーキャピタル各社から投資をうけている、合計評価額15億米ドルのユニコーン企業です。

創業からわずか3年で、Allbirdsのスニーカーは、瞬く間にシリコンバレーで働くテック業界の人々の間で人気となり、その後すぐに起業家やセレブ、政治家へと広まりました。バラク・オバマ前米大統領やグーグルの共同創業者ラリー・ペイジ、司会者オプラ・ウィンフリーや俳優のマシュー・マコノヒーなど、そうそうたる面々がAllbirdsを履く姿を目撃されており、俳優のレオナルド・ディカプリオにいたっては同社の投資家にもなっています。

今回はAllbirdsが人々を惹きつける魅力をご紹介します。

クラウドファンディング生まれのスニーカー

創業者のティム・ブラウンは、ニュージーランドのサッカーチームの副キャプテンだったときに、Allbirds創業のアイデアを思いつきました。ロゴがたくさん書かれた合成素材製トレーニングシューズに飽き飽きして、シンプルでナチュラルで、革靴ほど形式ばらないシューズを欲しいと考えていたのです。

そこで彼は、柔らかいメリノウールを素材にすることに決めました。メリノウールで編んだ靴下やセーターを愛用してきた彼は、そのよさを十分に理解していたのです。2014年、彼はニュージーランドの羊毛産業から、スニーカーを設計するための研究助成金を受けました。その後、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」でキャンペーンを開始。わずか4日間で、950人を超える支援者からおよそ12万ドル(約1,323万円)を調達しました。

その後、Kickstarterキャンペーンの支援者のひとりだったジョーイ・ズウィリンガー(再生可能エネルギーを専門とするバイオテクノロジーのエンジニア)とチームを組み、2016年3月にAllbirdsを正式に立ち上げました。社名の由来は、ニュージーランドに最初に足を踏み入れた開拓者たちが、たくさんの鳥を目にしたことで「鳥だらけ(all birds)」の島と呼んだことにあるそうです。

Better Things In a Better Way〜より良い方法でより良いものを〜

Allbirdsの特徴は、サステナブル(持続可能)な素材と製法にこだわる「環境にやさしい」こと。

メリノウールは、持続可能で人道的な畜産を実践するニュージーランドの羊飼いから仕入れ、ソールに使用しているポリウレタンはヒマシ油を使用しています。そして靴ひもは、リサイクルプラスチックボトルでできています。洗濯機で丸洗いも可能です。ウールだけでなく、最近独自に開発したユーカリ繊維の製法も、コットンやポリウレタンの製法に比べ、水の使用量がはるかに少なく、ほぼすべての水を川に流さず、リサイクルしています。原料となるユーカリの木も、もちろん持続可能な方法で収穫されています。環境基準をみたし、監査を受け、数々の認証を取得しています。

もちろん靴を入れるパッケージも、90%のリサイクル段ボールから作られています。そしてもちろん、より良い素材の開発にも力をいれており、これまでのフットウェア業界にイノベーションを起こし続けている企業なのです。

自然素材を使用し、環境にやさしいことが、「世界一快適な履き心地」を実現しているといってもよいでしょう。

成長のカギはは“D2C(Direct to Consumer)”

Allbirdsの特徴は、最初からD2C(Direct to Consumer)の手法を展開した点にあります。

D2Cとは、メーカーやブランドが自らECサイトを構築して直接消費者とつながり、ファンを増やしながら販路を拡大する手法で、過去にGood Service Design Seriesで紹介した「Casper」や「Warby Parker」もD2Cの成功企業です。実店舗を多く持てない小さなスタートアップは、SNSを巧みに活かし、商品の企画を行い、「顧客と対話する」ことで消費者の趣向を汲み取り、商品企画へ活かすモデルを構築しました。

Allbirdsはインスタグラムを通じた広告戦略を上手に運用しています。たとえば新規商品を発表した際、インスタ映えする画像を投稿。顧客からのコメントを担当者が1つ1つ丁寧に追いかけることで製品開発へと反映させています。実際に、顧客の声からなんどもモデルチェンジを行ったり、ラインナップにはなかった新色展開を実行しています。

こうしたSNS戦略を採用することは、自社ブランドのコアファン構築や、顧客との強いエンゲージメントを築くことに繋がります。大衆ではなく、コアファン層からの意見を中心に取り入れるので、ユニークな製品開発へと結びつけやすく、競合他社と大きく差別化を図ることができます。

またAllbirdsが提起したSNSを通じた顧客との対話から、コールセンターやオンラインチャット対応の仕事も、顧客からの意見を取り入れる重要なチャネルとして認識され始めたのです。

今ではAllbirdsではサンフランシスコやニューヨーク、ロンドンなど実店舗を展開し、ECだけでなく店舗で試着しながら購入することが可能です。そしてつい先日、スニーカーだけでなく靴下の販売も開始しました。ユーカリとメリノウールを組み合わせた新素材を18カ月かけて開発し、「足元を汗の悩みから解放してくれる」といいます。この素材の応用範囲は広く、今後の新たな展開も期待できそうです。

Tree Loungers(筆者私物)

編集後記:
シリコンバレーの企業では、MacBookと同じくらい、みなAllbirdsのスニーカーを履いているという評判を聞きつけ、我々もAllbirdsサンフランシスコ店に行きスニーカーを購入しました。まるで足の一部かのように軽く、まさに「世界一の履き心地」。足の甲の幅も広く、日本人でもすぐ人気になること間違いなし!のスニーカーだと思うので、皆さんにも是非トライしてみていただきたいです。

Allbirds San Francisco